お月見戦争!秘伝の味を守れ!!


この作品は三千界のアバターの二次創作になります。

▼シナリオガイド

「アルテラの森の奥にね、大和世界に近い文化をもったエルフの里があるみたいなの」

 温室でにこやかに切り出したジュビアはそっと本を開いてとある項目を指した。

「そこでは十五夜とは呼ばずに『月御言』って言って、
月に対して感謝とお祈り、それから占いをするんだって。
この占いが『月の言葉』だから、月御言。すごく綺麗なお祭りだよね」

 白くて甘い芋を潰して作ったお餅に似た触感のものに
蜂蜜と香草で精製した一風変わったみたらしに近い『たれ』を掛けたお団子がとても美味しいんだとか。
そう嬉々として話していたジュビアだったが、急に眉尻を下げて困った表情を浮かべる。

「だけど、ここ最近ゴブリンが森を荒らしてるみたいで
その『たれ』の元である蜂蜜がとれなくなるかもってエルフの女の子が言ってたの。
彼女のお願いを叶えたら、もしかしたら皆もそのお祭りに参加できるかもね」

 身内――エルフだけの神聖なお祭りのようだが、彼女曰く『里の住人はユニークで優しいから大丈夫』らしい。
彼らとしては本当は色んな人に布教して参加して欲しいらしいのだが、
どうやら他のエルフの里に対する建前の都合でおおっぴらには誘えないらしい。
 ビデオカメラを渡しながら、ジュビアはお願いね、と一同に微笑みかける。

「…私はまぁ外に出れないのだけれど。その、見てみたくって。できれば撮ってきてほしいな」

 それから、とジュビアが思い出したように言葉を続ける。

「ゴブリン達だけど、どうやら荒らし始めたのは最近みたい」

 ……なにか、理由でもあるのだろうか?しかしここで悩んでいても答えは出ない。
こうしてジュビアの依頼を受けた一行はアルテラの辺境の森に住むエルフの里へと向かうことになったのである。

▼リアクション

 エルフの少女の依頼を受けたアンジュ・フィルガスピア(SAM0020565)は初めてのアルテラの地に好奇の目を向ける。
『侍』のアバターの弱体化を感じていたものの、この地のアバターを所持していない彼女にとっては些細な事実だった。自分達は戦いにここへ来たわけではないのだ。

「大和と違って、海外チックだが。これはこれでなかなかに期待できそうじゃないか」

 そう思わないか?と振り返った先では、エルフに対して四十沢・慧業(SAM0000804)が悪戦苦闘しているのが見えた。
どうしたのかと問いかける前に、アンジュは市長の言葉を思い出して納得する。特異者に覚醒していない者は異世界の物体を正しく認識できないのではなかったか。

「うーん、ボタンも認知できないとは!世界の壁は厚いなぁ」
「私がそれを持とう。侍アバターである以上、あまり戦力にはなれないからな」

 ボタン一つで録画できるものなら大丈夫だと思ったのだけれどと苦笑しながら、慧業はアンジュにビデオカメラを渡す。
森には行きがけにたくさんの仕掛けを施した。あとは、それを撮影するだけだ。

「さてさて!楽しい楽しい冒険と行こう!」
「ふふ。すごく生き生きしてるね四十沢君」

 ビデオカメラを回しながら、親指を立ててサインを送るアンジュと慧業の隣で、屈強なエルフの戦士たちは不思議そうに二人を見ていたのであった。



***



「待て、毒蛇だッ!」
「なんだと!?」

 慧業の言葉に蛇の姿に一斉に躍りかかるエルフの戦士達。しかしそれが玩具だとわかれば何とも言えない表情を浮かべる。
慧業は言えば無残に壊れたおもちゃに阿鼻叫喚。再利用ができないとなるとこの先のドッキリにもお財布がマッハである。
アンジュといえば、壊れたおもちゃを抱えて今なお呻く慧業の嘆きを演技だと思ったのか口笛をヒュウっと鳴らした。

 その後も慧業の罠が続き、エルフも玩具に慣れたのか、5つの損害こそあったが途中で反応をしなくなった。
アンジュもアンジュでカメラを回しながら風景を存分に堪能する。
 しかし、そんなお気楽な雰囲気もエルフの一言で消え去った。

「いたぞ」

 そっと物陰に潜む一同。こくりと一同に頷いてから、比較的小柄なエルフの男が先に進む。
見ればゴブリンが5体ほどが大樹に集まっていた。暫く観察していると、ゴブリンが松明に火をつけ、肩車をして蜂の巣をつつき始める。

「驚いたな。結構手馴れているじゃないか」
「奴らどれだけの数、蜂蜜を奪っていったんだ……?」

 ぎりっと奥歯を噛むエルフに、慧業は問いかける。

「そんなに材料が足りてないのか?」
「ああ、去年に比べたら半分もいってない。いくら今年が不作だとしても、少なすぎるんだよ」
「あいつらを叩きのめして、取り返してやる」

物騒なことをいうエルフに慧業はまあまあと肩に手を乗せる。

「ふふん。まあ、そう言わず私に任せなさい」

 潜伏するエルフを横目に、堂々と慧業は近づいていく。
制止しようとする小柄なエルフを大柄なエルフがたしなめれば、伸ばした手をひっこめる。
どうやら自分は彼らに信用されているらしい。
 フッとほほえみながら進む彼を不気味に思ったのか、彼の姿に気づいたゴブリンが松明を構える。


「戦うつもりかな?それもいいだろう、だがッ」


 それは一瞬の出来事だった。これを見よとばかりに、男の衣服が宙を舞う。
同時に放たれたまばゆい閃光がゴブリンから視界を奪い、怯ませる。
あまりにも馬鹿げた光景であるのに不思議と目が離せないのは彼が持つ『誘惑』のせいなのだろうか。
固まったのはゴブリンだけでなく、エルフも同様で。
 カメラを一時停止にしながら、アンジュはやれやれと額に手を当てて、大げさにため息をついた。

「君には本当に驚かせられるよ……」


***


 対した武器も持っていないあっけなくゴブリンが降伏したのは、
はたして四十沢の『ルミナリア』と『誘惑』による合わせ技のおかげなのだろうか。
それとも、両者が武器を構える事態に陥ることがなかったからなのだろうか。

 ゴブリンのうち、煙を使って蜂を払っていた者――この中で一番賢いものらしい――が、しゅんとした面持ちで答える。

 去年の月御言の日。デモニスの子供とエルフの少女が出会ったことからすべては始まった。
夜の森に迷いこんだその子供が明かりを見つけて近づくとそこはエルフの里。自分の集落ではないことに気付いた彼の絶望はどれほどのものだっただろう。
体力も気力もなくなったゴブリンの子供はその場で蹲り、一人シクシクと泣いていた。

 そこに現れたのは、人ごみに酔い、少し涼もうとやって来たエルフの少女。
彼女は持っていた団子の包みを渡し、そのうちの一つを食べさせて慰めてくれたらしい。


 数時間後。雲が晴れ、月光に照らされ明るくなった森で、迷っていたのがウソのように簡単に子供は集落に帰ることができた。
それはまるで月に導かれていたようだったという。

 そして無事に集落へ帰ることができた子供は、お土産にもらった団子を心配をかけたからと皆で分け合うことにしたのだ。
それは彼らにとって初めての『料理』という文化に触れた瞬間だった。
あまりにも美味しかったその団子を、ゴブリン達は自分たちで作れるようになりたいと考え、
その日からずっと団子の味を研究し、材料に蜂蜜が必要と知り、集めていたのだという。


「もしかしてその少女って」


 依頼主の少女だろうか。と外見を説明したアンジュに、ゴブリンはこくりとうなづいた。


「その少女で間違いナイ」
「そういうことならさ、一緒に月御言をすればいいんじゃない?」


 慧業の提案に一瞬、エルフは目を丸くしたが悪くない提案だと言葉を返す。


「これを期に、月御言の文化が広まれば良い」
「ツキミコト?」
「ああ。例の団子は食べると幸福になれるというものだ。
きっと、あの子もそれを願って渡したんだろう。しかし、月に導かれて……か」

 これは偶然なのだろうか?と首をかしげたエルフに、アンジュは笑う。


「月の女神が、君たちの感謝に答えたのだろうよ。月御言は素晴らしい文化だね!」
「月の導きならなおさらだ。君たちも、祭りに来るといい」
「ホントウカ!」
「団子!アマイモノ!」
「団子クレルナラ、ハチミツ、ワケテヤル!」


 カタコトな言葉を代表して、賢いゴブリンが一礼し、エルフと握手を代わす。


「蜂蜜なら、3樽程ある。それで足りるカ?」
「そんなに集めてたならそりゃあ森にあるのが少ないはずだ。むしろ豊作だな!」


 かくして、今年の月御言は盛大に行われることになったのである。


***


 夜を迎えたエルフの里。
そこはいつもと違ってデモニスの姿も多く見られたが、その表情は笑いに満ちたものだった。
アルテラで起きた大事件から一年余り。まだデモニスとの関係にわだかまりを残すエルフが多い中、
この里ではどこよりも早く、デモニスと友好的な関係になれたのである。


 蜂蜜を集めていたのはゴブリンだけではなかったらしく、彼らの食べた『アマイモノ』の自慢話に惹かれてアルラウネやアルミラージも手伝っていたらしい。
そのせいなのか、エルフでは届かない崖に巣を作る蜂の蜜を集めることができ、結果としてその日の団子はいつもより風味の良い極上のたれができた。
デモニス種の多様さに驚くとともに、知らない技術をデモニスと共有できたことにエルフも満足そうだった。


 月が高く上った時刻。月御言が始まった。
静まり返るエルフ達に合わせ、デモニス達も徐々に話し声が減っていく。
水の音だけが響くようになると、白い絹の衣を着たエルフの女性が澄んだ泉に一礼し、団子を捧げる。
ぽちゃんと沈んでいく白い塊は、まるで月が泉に落ちるよう。


 花が増えていく様子に、リズ・ロビィ(SAM0005537は初め、茫然と泉を見つめていた。
吸い込まれるような幻想的な風景。初めて見る月御言に興奮は静かに燃える炎にもよく似た冷たさを感じる。
そうしていると、ゴブリンがこちらにやってくる。差し出された団子には黄金のたれがよく絡んでいて。
振るまわれた団子に舌鼓を打ちながら、エルフとデモニスの話に耳を傾けこの光景の美しさの感想などをエルフの少女たちと交わした。
 そうしてしばらく、おしゃべりに夢中になっていると、あなたの番ですよと若いエルフがやってきた。
その言葉にやっと、自分が順番が回っていたのに気が付いた。
うっすらとリズは赤くなりながら恥ずかしそうに笑い、泉の方へを足を進めた。


 エルフの女性から白い花を受け取ると、リズはそっと囁くような声で告解する。
泉には橋が架かっており、普通に話してもここからは皆に聞こえないようになっているのだが、
神聖な雰囲気が、月夜の静けさに準ずるよう、無意識に彼女をそうさせたのだ。


「あたしはずっと、絵を描いてきたさー。
息を吸うように、何度も何度も筆を取ってきたけど、まだあたしだけの景色を描けていなければ、見つけてもない。
いつかきっとできるって信じてるけど、最近ちょっと、思うところがあって……」


 今まで自分の感性に従っていたと思ってた。どれも全てどこかの誰かの模倣に過ぎないのでは?
敬愛する画家たちを参考にしているうちに、自分の描き方を見失ってしまったのではないか?
己が歩んできた道を、そしてこれからを導き、映し出してほしい。


 リズが花に想いを込めて、水面に放つ。蓮華の花によく似たそれは、木々から漏れる光を受けて、開花した。
じっと花を見つめるエルフの女性。彼女が結果を伝えてくれる役なのだが、なぜだかその身を折って、泉に対して深く礼をする。


 その瞬間。水面が揺らぎ、泡がはじけるように泉が盛り上がった。
そしてそこから身の丈以上の大きさの七色の鰭をもった、トビウオのような魚が飛び跳ねる。水しぶきが、月光を反射させてきらきらと輝いた。
光を纏って空中に浮かぶ様子は、まさにこの存在が泉の主であると納得するには十分で。

 息を呑んだリズの目の前で、泉の主は団子を咥え、現れたときと同様にまた、水の中へと戻っていく。


「……今のは……」
「貴方は幸運ですね。あの方が自ら姿を見せて答えを返す事はとても珍しいのですよ」


 そうして、エルフの女性が去るのをしばし見送ってから、リズもまた席にもどる。
先ほどの魚は、なんだったのだろうと思案する横で、答えが返ってきた。


「ここの主だろうな。すごい魔力を持っていた」


いつの間にそこにいたのだろうか。水守・オロチ(SAL0026013)が泉を見つめてリズに語り掛ける。


「人間の願いの力は、想像している以上に強いものだ。
清い願いが、あれをあそこまでの存在に変えたんだろう。
森の恵みが豊富だったり、ここのエルフの住人が寛大な心を持っているのは、かの存在が邪な物を払っているからだろう」


 説明の間にも、占いの儀式は続いている。占いを受ける者たちが一人づつ白い花を浮かべていく。
花弁に月光に触れた途端、淡く青色に輝きながら開花するその様子は、とても神秘的な印象を受けた。


「すっごく綺麗さー。こんなに綺麗なのも、あのお魚のおかげなんだね」


 感慨深いと笑いながら、リズは振り返って水面を見つめる。

 筆を白いキャンパスに滑らせる彼女に、もう迷いはなかった。
静かな夜を表す濃い青に、薄氷のような水色が紙の上で咲き誇り、白金の月が浮かぶ空に七色の魚が泳ぐ。
目に焼き付いて離れない神秘的な景色の色をキャンパスへ塗る間に、どれくらいの時間が経過したのだろうか。
気が付くと回りに人が集まっており、リズが描いたその絵に感嘆の声をあげる。
彼女が最後に魚の目を描き終えて、ふう、と息をついたと同時に、見ていた者は拍手とともに口々にこう囁いた。


「月が彼女に、かの主の色を分け与えたのだ」



 かくして特異者によって大成功を収めた月御言。
数年後、里だけではなくアルテラの一部の地域で広まったこの祭りは
のちに夜灯祭という名で新たな文化として歴史に刻まれることを、彼らはまだ知らない。

▼リザルト

メイン目標
→All Clear
  • 「ゴブリンの奇行」の原因を知る
  • 月御言を成功させる
  • ジュビアへビデオをプレゼント
サブ目標
→All Clear
  • 月御言を広める
  • 泉の主との邂逅

疑似称号獲得内容

  • 四十沢・慧業 《クレイジーな仲介人》
  • リズ・ロビィ 《虹色魚の絵描きビト》

2014.09.19.
ニュースでスーパームーンが話題になり、それに惹かれて
このたびは季節物の疑似シナリオを用意させていただきました。

疑似称号はあくまで自称になりますが、
フレーバーとして、ささやかなプレゼントです。

もしも誤字脱字、ご感想などありましたら、
参加時同様、ジュビア・ヴィテルディアへメールを送ってくださいませ。

最後に、この度参加してくださった「四十沢慧業」様「リズ・ロビィ」様
本当にありがとうございました。楽しく執筆させていただきました。
もし機会がありましたら、ぜひまたよろしくおねがいします。



執筆担当:蛇の目(PC:ジュビア・ヴィテルディア/LC:水守オロチ)


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